家族信託

1.信託とは

   信託を一言で説明すると「信じて何かを託す」ことを言います。中世ヨーロッパで十字軍にするた

   めに英国から出征する貴族は、全財産を置いて戦地に向かいます。当時は妻や子供には財産を管理

   する権限がありませんでした。そこで、最も信頼できる人に残された財産を託すことにより、安心

   して戦場に向かうことが出来たと言われています。

2.「商事信託」と「民事信託」の違い

 (1)商事信託

     商事信託とは、信託業法の適用を受ける信託銀行のように業として、不特定多数の人から反復

     継続して、信託を引き受けることをいます。

 (2)民事信託

     民事信託とは、信託法の適用を受け、営利目的とせず、反復継続でなく、1度だけ引き受ける

     信託です。

     「家族信託」、「ペット信託」は民亊信託になります。

3.信託の基本的な登場人物

 (1)委託者

     委託者とは、信託財産の元々の所有者で財産を託す人です。

 (2)受託者

     委託者から財産を託され、その財産を管理・運用する人です。

     商事信託では、受託者は信託銀行などになります。

 (3)受益者

     信託財産から生じる利益を受け取る人です。

4.信託の種類

 (1)他益信託

     他益信託とは、委託者と受益者が異なる信託をいいます。

 (2)自益信託

     自益信託とは、委託者と受益者が同じになる信託をいいます。

 (3)自己信託

     自己信託とは、委託者自身が受託者となる信託をいいます。

     委託者と受託者が同じ場合には、債権者保護や制度の乱用防止といった見地から公正証書で作

     成するなど、公的な場を利用して信託を宣言する方法により効力を発生される信託です。

5.信託を使った方が良い人

 (1)自分に万が一のことがあった場合、遺された認知症の妻が心配

     信託を設定することで、自分に万が一のことがあった場合に、遺された認知症の妻に、定期的

     に妻の生活費を交付しながら、大切な財産を保全することができます。 また、妻が亡くなられ

     たときは残余 財産(余った信託財産)を誰に帰属させるかも設定することができます。

 (2)自分に万が一のことがあった場合、遺された障がいを持つ子どもが心配

     信託を設定することで、自分に万が一のことがあった場合に、遺された障がいをもつ子どもの

     に、定期的に子どもの生活費を交付しながら、大切な財産を保全することができます。また、

     子どもが亡く なられたときは残余財産(余った信託財産)を誰に帰属させるかも設定すること

     ができます。

 (3)自分に万が一のことがあった場合、遺された愛犬が心配

     信託を設定することで、自分に万が一のことがあった場合に、遺された愛犬に、定期的に犬の

     飼育費を交付しながら、大切な財産を保全することができます。また犬が亡くなられたときは

     残余財産(余った信託財産)を誰に帰属させるかも設定することができます。

 (4)遺言の代わりとして、あなたの財産を分配したい

     信託を設定することで、遺言書と同じ効力が認められます。自分の死亡時の受益者や残余財産

     の帰属権利者を定めることができます。これを遺言代用信託といいます。 遺言では相続人がな

     くなった場合 の、次の相続者の指定はできませんが、遺言代用信託では受益者がなくなったあ

     との二次受益者の指定をすることも可能です。また、遺言代用信託の場合、遺言と違い、検認

     や遺産分割協議を行う必要 はありません。ただし、遺留分には配慮する必要があります。

 (5)先祖代々承継してきた家を直系の甥に承継したい

     子どもがいない夫婦の場合、自分がなくなった場合妻が家を相続し、妻がなくなった後は、妻

     の親族が相続することになります。先祖代々承継してきた家を直系の親族(甥)に承継したい

     場合、信託を 設定することで、可能になります。

 (6)老後の財産管理が心配

     現在は元気で財産管理ができていても、今後、認知症や老人ホームに入所した場合の財産管理

     が心配な場合も、信託を設定することで安心した老後を過ごすことができます。認知症になり

     成年後見制度 を利用すると、成年後見人は財産管理の保全が目的ですから、孫に入学祝い金を

     あげると約束していても、約束を果たすことはできなくなります。 元気なうちに信託を設定す

     ることで、孫との約束を果 たすことも可能になります。

 (7)不動産の共有を回避したい

     アパート経営をしているオーナー所有者の相続が発生し、主な相続財産はアパートのみの場合

     相続人全員の共同所有となります。将来発生する「大規模修繕」や「売却」をするためには相

     続人全員の 合意が必要となり、行うことが難しくなります。信託を設定することで受託者の判

     断でこれらの行為を行うことが可能になります。

 (8)自分がなくなった場合に、小さな子供が受け取る生命保険金の管理が心配

     シングルマザーなどで、自分が亡くなった場合に、生命保険金の受取人が、小さな子供の場合

     生命保険金で充分なお金を遺しても、どのように使われるのか心配です。 生命保険信託を設定

     することで 生前に契約した内容で、定期的に生活費や学費などを交付することができます。